令和8年7月2日(木)、静岡県総合社会福祉会館「シズウエル」において、令和8年度第1回就労支援部会を開催しました。 当日は、県内各地の育成会関係者や就労支援関係者が出席するとともに、静岡労働局職業対策課、静岡県障害者政策課、産業人材課、静岡県教育委員会特別支援教育課の担当者にご出席いただき、障害のある人の就労支援や障害者雇用の現状、福祉的就労、特別支援学校卒業後の進路などについて説明を受けた後、活発な質疑・意見交換を行いました。
当日の次第はこちらです。(PDF:84KB)
出席者:
静岡県手をつなぐ育成会 小出隆司会長
沼津市 中村芙美子さん
富士市 村田正之さん
焼津市 川崎ふみ恵さん
袋井市 伊藤吉乃さん
浜松市浜松 芝 充子さん
浜松市浜北 大城千幸さん
静岡中東遠障害者就業・生活支援センター ラック 柴田量吉さん
静岡県障害者就労研究会 瀬戸脇正勝さん
静岡県労働局 職業安定部 横地友貴さん
静岡県健康福祉部障害者支援局障害者政策課 柳原正卓さん
静岡県健康福祉部障害者支援局 産業人材課 吉野啓吾さん
静岡県教育委員会特別支援教育課 加茂 聡さん
就労選択支援を「働き方を広げる制度」として
開会にあたり、小出会長から、令和7年10月に始まった「就労選択支援」について触れ、「就労継続支援B型を直接利用するためだけの制度ではなく、本人の希望や能力、適性をアセスメントし、より幅広い働き方を考えていくための制度である」との話がありました。
また、これまで障害福祉サービスの中だけで考えられがちだった就労支援について、今後は労働行政との連携を一層深め、一般就労も含めたさまざまな選択肢につなげていくことが重要であると説明しました。
出席者の自己紹介では、一般就労を長く続けている方、企業での契約終了をきっかけに再び就労支援につながった方、一般就労から福祉的就労へ移行した方、福祉型カレッジや職業訓練を利用した方など、それぞれ異なる就労経過や現在の状況が紹介されました。障害のある人の「働く」ということには、実にさまざまな道筋があることが改めて感じられる自己紹介となりました。
ハローワークを中心とした「チーム支援」
静岡労働局からは、障害者雇用促進法に基づくハローワークの支援について説明がありました。 ハローワークでは、障害のある方への職業相談や職業評価、就職後の定着支援を行うとともに、企業に対しても障害者雇用に関する相談や助成制度の活用支援などを行っています。
特に、本人の状況に応じて、特別支援学校、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどの関係機関が連携する「チーム支援」を進めており、就職準備の段階から採用後の職場定着まで、切れ目のない支援を目指しているとの説明がありました。
また、令和8年4月から民間企業の法定雇用率が2.8%に引き上げられたことや、週10時間以上20時間未満の短時間勤務についても、一定の条件のもとで障害者雇用率に算定できる仕組みが紹介されました。
福祉、教育、医療から一般雇用への移行を進めるため、企業での職場実習を活用した支援も引き続き実施しているとのことでした。
工賃向上と福祉的就労を支える取組
静岡県障害者政策課からは、福祉的就労における工賃向上や就労支援に関する取組について説明がありました。 県では、「障害者働く幸せ創出センター」を拠点として、福祉事業所の共同受注や企業・地域との連携、常設店舗の運営などを行っています。
また、障害福祉サービス事業所で作られた製品の購入促進を図る「ふじのくに福産品」について、名称を「福産品」に統一し、企業等による継続的な購入やSDGsパートナー認定などを通じた普及を進めているとの説明がありました。
複数の事業所が協力して生産活動を行う「生産活動パワーアップ事業」では、共同で焼き菓子を開発するなど、単独の事業所では難しい商品開発や販路拡大にも取り組んでいます。
さらに、農業分野での職域拡大を目指す農福連携や、工賃向上計画に基づく支援についても紹介されました。静岡県では、令和8年度の平均工賃月額25,000円を目標としており、令和6年度の平均工賃月額は23,496円となっています。
そのほか、知的障害のある方が居宅介護職員の資格取得を目指す研修についても説明があり、一般就労につながる新たな職域の一つとして期待されています。
企業と障害のある人をつなぐ就労支援
静岡県産業人材課からは、障害のある方の一般就労や職場定着を支援する取組について説明がありました。 県では「障害者活躍推進雇用サポーター」を配置し、障害者雇用に取り組もうとする企業を訪問して、仕事内容の切り出しや採用、関係機関との連携などを支援しています。
また、県独自のジョブコーチ制度を設け、障害のある方が職場に定着できるよう、本人と企業の間に入り、障害特性への理解や仕事の進め方について継続的な支援を行っています。
企業で実際の仕事を短時間体験する「仕事体験会」も行われており、福祉事業所を利用している方にとっては一般就労を考えるきっかけとなり、企業側にとっても障害者雇用への理解を深める機会となっています。
特別支援学校卒業後の進路
静岡県教育委員会特別支援教育課からは、特別支援学校高等部卒業生の進路状況について説明がありました。 令和8年3月卒業生では、就職した生徒が212人で全体の34.2%、就労支援サービスを利用した生徒が222人で35.8%、生活介護などの生活支援につながった生徒が146人で23.5%となっています。
就職を希望した生徒は全体の38.6%で、そのうち86.4%が就職を実現したとのことでした。 県内では、地域ごとに就業促進協議会を設置するとともに、就労先の開拓などを行う専門員を配置し、特別支援学校高等部の生徒の現場実習や就職支援を進めています。
民間の就職エージェントも選択肢に
事前質問では、ハローワーク以外の民間就職エージェントを通じた障害者の就職についても話題となりました。 静岡労働局からは、民間紹介事業者を通じた就職の正確な全体数は把握していないものの、助成金の申請状況などから見ると、県内ではまだ数%程度と考えられるとの説明がありました。
一方、委員からは、大手企業や特例子会社などでは、民間の障害者向け就職サービスを活用して採用するケースも増えているとの意見がありました。 就職先を探す方法についても、ハローワークだけに限らず、本人に合った方法を選択しながら幅広く情報を集めていく必要があるのではないかとの意見が交わされました。
就労選択支援をどのように活用するか
就労選択支援についても意見交換が行われました。 現在、特別支援学校高等部卒業後に就労継続支援B型を利用する方を中心に制度が利用される傾向がありますが、本来は、本人の働く力や希望を客観的に整理し、一般就労、就労移行支援、就労継続支援など幅広い選択肢を考えるための制度です。
教育委員会からは、学校として就労選択支援の利用率は把握していないものの、生徒の進路決定に大きく関わる制度であることから、今後、学校の進路指導とどのように連携していくか検討しているとの説明がありました。
部会では、「就労選択支援が『直B』のためだけの制度になってしまわないよう、本来の目的を広く理解していくことが必要」との認識を共有しました。
障害者雇用は「数」だけでなく「質」も重要
意見交換の中では、障害者雇用の「質」についても多くの意見が出されました。 法定雇用率を達成することが優先されるあまり、本人の能力や適性と仕事内容が合っていないケースや、契約社員として数年間働いた後に契約が終了し、再び就職先を探さなければならなくなる事例などが報告されました。
一度企業を離れた後、福祉サービスを利用した経験がないために、「どこに相談すればよいのか」「どのサービスが利用できるのか」が分からず、本人や家族が一から制度を調べ直さなければならないケースもあります。
「就職できたかどうか」だけではなく、本人に合った仕事であるか、安心して長く働き続けられるかという視点が重要であり、職務内容の工夫や定着支援の充実が必要との意見が出されました。
制度を知らなければ選択肢につながらない
部会委員からは、障害のある本人や保護者が、就労や福祉に関する制度を理解することの難しさについても意見がありました。 特別支援学校を卒業した後、一般の高等学校や専門学校等を経由した方の場合、福祉制度とのつながりが途切れ、就職や生活に困った時にどこへ相談すればよいのか分からなくなることがあります。
障害者手帳、障害年金、就労移行支援、就労継続支援など、本人の将来に関わる制度は数多くありますが、その情報が十分に届いていない現状もあります。
保護者が制度を学ばなければ、本人が必要な支援につながりにくいという課題もあり、学校在学中から卒業後を見据えた情報提供や相談支援が必要との意見が出されました。
「育てる支援」と就労の選択肢
福祉型カレッジや自立訓練など、就職する前に生活力や社会性、本人の意思決定力を育てる支援についても話題となりました。 こうした支援を利用することで、本人が自分の将来について考え、生活する力や働く力を身につけることができます。
一方で、こうした選択肢は地域によって大きな差があり、特に県東部では利用できる事業所が少ないとの意見がありました。 就労移行支援事業所や就労選択支援事業所の数にも地域差があり、住んでいる地域によって利用できる制度や支援の選択肢に差が生じていることも課題として挙げられました。
また、企業側では短期間の雇用や即戦力を求める傾向もあり、時間をかけて本人の力を育てる支援と、実際の雇用現場との間にギャップがあるとの指摘もありました。
本人に合った「働く」を考えるために
今回の就労支援部会では、行政から障害者雇用や福祉的就労に関するさまざまな制度や取組について説明を受けるとともに、実際に障害のある方の就労を支えてきた家族や支援者から、具体的な経験や課題が数多く語られました。
障害のある人の働き方は一人ひとり異なります。一般就労、福祉的就労、短時間雇用など、さまざまな選択肢の中から、本人の希望や特性に合った働き方を選び、必要に応じて何度でも選び直すことのできる支援体制が求められています。
今後も静岡県手をつなぐ育成会では、行政、教育、労働、福祉の各関係機関との連携を深めながら、障害のある人が自分らしく働き、地域で安心して暮らしていくことのできる環境づくりについて、引き続き考えてまいります。












