第34回 知的障害者職業自立啓発セミナーの開催(報告)

静岡県手をつなぐ育成会は、令和8年9月5日(土曜日)、静岡市の静岡県総合社会福祉会館「シズウエル」で、第34回知的障害者職業自立啓発セミナーを開催しました。当日は、知的障害のあるご本人やご家族、支援者など約160人が参加し、地域で安心して暮らし、働き、自分らしい生活を続けていくための権利擁護や社会参加について、共に学び、考えました。 午前の部では、全国手をつなぐ育成会連合会顧問・前会長の久保厚子さんによる「成年後見の現状と課題」の講演を通じ、ご本人の意思を尊重した支援について理解を深めました。午後の部では、「みんなでつくる本人大会プロジェクト」をテーマにシンポジウムを行い、令和11年度に静岡県で開催予定の全国大会に向け、ご本人の思いや希望を出し合いました。ご本人の声を大切にしながら、これからの地域での暮らしや活動、大会づくりにつなげていく機会となりました。

 第34回 知的障害者職業自立啓発セミナー  次 第 

日時:令和8年9月5日(土曜日) 10:00 ~15:00
会場:静岡県総合社会福祉会館シズウエル 7階703会議室
○ 開会のことば  静岡県手をつなぐ育成会 副会長 佐藤 則博                  ○ 主催者挨拶   静岡県手をつなぐ育成会 会長 小出 隆司
○ 講演
演題 「 成年後見制度の現状と課題 」
講師 (一社)全国手をつなぐ育成会連合会
顧 問・前会長 久保 厚子さん
―――― < 昼食休憩 > ――――
○ シンポジウム
テーマ「みんなでつくる本人大会プロジェクト」
○ 閉会のことば  静岡県手をつなぐ育成会 副会長 水崎 裕久  

 

静岡新聞、令和8年9月9日掲載、静岡新聞社編集局管理部許諾済み

○ 講演 「 成年後見制度の現状と課題 」 概要 <文責:事務局>
4ページ 現行の成年後見制度の課題 現行制度には、家庭裁判所が選任した後見人等の交代が難しいこと、財産管理に重点が置かれ、本人の生活や福祉に関わる身上保護が十分でないことなどの課題がある。また、障害基礎年金を主な収入とする本人にとって報酬の負担が重く、本人の意思が十分に反映されていないことも問題として挙げられる。

8ページ 必要なときに必要な範囲で利用できる制度へ 成年後見制度を、本人が必要なときに、必要な範囲で利用できる柔軟な制度へ転換する方向が示されている。一度利用すると終了しにくい仕組みを見直し、一時的な利用や、本人の状況に応じた支援者の交代を可能にすることが求められる。 10ページ 新たな補助類型への一元化 現在の後見・保佐・補助の3類型を、新たな補助類型へ一元化する方向が示されている。本人に必要な支援に応じて同意権や代理権を個別に設定することを基本とし、例外的な保護の仕組みとして「特定補助」を設ける考え方である。

13ページ 同意権・取消権を必要な範囲に限定 補助人の同意を必要とする行為は、本人に不利益が生じるおそれなど、具体的な必要性に応じて限定する。権限の設定は本人の請求または同意を原則とし、本人が意思を表出できない場合には例外的な取扱いを設ける方向である。

15ページ 制度利用における本人の了解・同意 補助人に同意権・取消権・代理権を付与する際には、原則として本人の了解・同意を必要とする。制度の利用開始に当たっては、本人に説明し、意向を確かめることが基本となる。意思表明が困難な場合には、無理に同意を求めず、その状況に応じた手続きをとる。

17ページ 特定補助の対象 特定補助は、本人が自らの行為の意味や結果を理解し、判断する能力を欠く状況にあり、かつ家庭裁判所が必要と認めた場合に適用する仕組みとして示されている。現在の成年後見よりも対象を限定し、必要性を踏まえて利用することが想定されている。

18ページ 特定補助による保護と意思確認の工夫 特定補助では、一定の行為をまとめて対象とする取消権や、本人への意思表示の受領、財産の保存行為に関する代理権などを付与する仕組みが示されている。 講演では、びわこ学園において、バイタルの測定を本人の意思の確認に活用しているとの紹介があった。言葉による意思表明が難しくても、様々な方法で本人の意思を確認する取組があることを、裁判所にも理解してもらいたいとの説明があった。

25ページ 本人の意思を尊重する仕組みと意思表明の練習 本人が公正証書で指定した人に申立権を認めることや、補助人の選任に当たって本人の意思を重視することなど、本人の意思を制度に反映する仕組みが示されている。 講演では、こうした仕組みを生かすためにも、本人が自分の考えを表明する経験を積むことが大切であり、「今からでも遅くはないので、意思表明の練習をしてほしい」との呼びかけがあった。

28ページ 地域の権利擁護支援と意思決定支援の充実 成年後見制度の見直しに伴い、地域の権利擁護支援と意思決定支援の重要性が一層高まる。講演では、総合的な権利擁護支援策の充実がポイントであり、日常生活自立支援事業などの拡充に、育成会としても取り組む必要があるとの説明があった。

35ページ 権利擁護支援ネットワークへの当事者団体の参画 市町村や中核機関を中心に、相談支援機関、家庭裁判所、専門職団体、社会福祉協議会、当事者団体などが連携し、本人を支える地域ネットワークの構築が示されている。関係者が情報を共有し、成年後見制度や日常生活自立支援事業などを組み合わせ、チームで適切な支援を行うことが重要である。講演では、このネットワークに当事者団体も積極的に関わっていく必要性が強調された。

47ページ 全国手をつなぐ育成会連合会が求めること 本人がより低額な費用負担で成年後見制度を利用できることや、報酬を支払う資産がない人への利用支援事業の拡充を求めている。また、中核機関の全国的な整備と地域格差の解消、意思決定支援に携わる支援者の養成、支援者の役割の理解と個人情報保護の徹底が重要である。

48ページ サポートファイルの活用と育成会の役割 家庭裁判所が参考にする本人情報シートだけでは伝えきれない情報を補うため、各地の育成会が取り組んでいるサポートファイル等の活用が重要である。本人の情報を十分に伝える資料となっているか、内容を改めて点検する必要があり、講演でもその活用が強く呼びかけられた。併せて、成年後見制度の利用を前提としなくても本人が安心して暮らせるよう、地域の権利擁護支援を充実させることが育成会に求められる。

○ シンポジウム 「みんなでつくる本人大会プロジェクト」 概要 <文責:事務局>
令和8年9月5日(土)、静岡県総合社会福祉会館シズウエルで開催した第34回知的障害者職業自立啓発セミナーの午後の部では、「みんなでつくる本人大会プロジェクト」をテーマにシンポジウムを行いました。 令和11年度に静岡県で開催予定の全国大会に向け、ご本人の希望や考えを大会づくりに生かしていくことを目的として、7名のご本人が登壇しました。会場の参加者も交え、全国の仲間と交流する企画や、安心して参加できる工夫、自分たちが担いたい役割などについて、さまざまな意見が交わされました。 全国の仲間との話し合いについては、仕事の内容や勤務時間、給料、仕事で困っていることやうれしかったことを聞いてみたいという意見がありました。また、趣味や休日の過ごし方、家族との暮らしなど、日常生活を話題に交流したいという希望も寄せられました。少人数のグループで話し合い、その内容を会場全体で共有する方法なども提案されました。 話し合いの中では、その場ですぐに考えを伝えることが難しい場合もあるため、各地域に持ち帰り、仲間と相談する時間を設けてほしいという意見もありました。当日参加できなかった方の声も聞きながら、継続して意見を集めていくことの大切さが確認されました。 参加しやすい大会にするための工夫としては、駅から会場までの丁寧な案内、大きく見やすい表示、スタッフだと分かる共通のTシャツなど、具体的な提案がありました。また、体調を崩した際に速やかに対応できるよう、連絡先を確認できる工夫についても意見が寄せられました。 大会の運営については、会場案内や受付、資料・お弁当の配布、式典のお手伝いなど、ご本人が役割を担って参加するアイデアが出されました。協力を呼びかける際には、どのような仕事を何人で行うのかを具体的に示すことで、仲間にも声をかけやすくなるという意見がありました。自分たちも大会をつくる一員として関わりたいという気持ちが伝わる話し合いとなりました。 交流や楽しみの企画では、名刺交換、クイズ、カラオケ、歌や踊り、各地の方言や特産品の紹介など、多彩なアイデアが寄せられました。富士山やお茶、県内各地域の特色を紹介し、全国から訪れる仲間に静岡の魅力を知ってもらいたいという思いも語られました。 今回のシンポジウムは、大会の内容を決定する場ではなく、ご本人の希望やアイデアを幅広く出し合う第一歩として行いました。今後は、会場の条件なども踏まえながら、寄せられた意見を具体的な企画につなげていきます。 また、各地域の集まりなどで今回の話し合いを伝え、新たな仲間にも参加を呼びかけていくことが提案されました。大会の準備を通じて、県内の本人活動や地域を越えたつながりが広がることも期待されます。

閉会に当たり、水崎裕久副会長から、全国から参加するご本人も、迎える側の皆さんも楽しめる大会となるよう、これから3年間かけて準備を進めていきたいとの挨拶がありました。 静岡県手をつなぐ育成会では、これからもご本人の声を大切にしながら、仲間と共に考え、つくり上げる本人大会を目指して取り組んでまいります。

2026年09月15日